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税金の滞納が続くと、「差押予告通知書」や「債権差押通知書」が届くことがあります。これは、国や自治体が未納の税金を回収するために、法律に基づいて強制的に財産を確保する手続きです。
この差し押さえを解除してもらうための大原則は、「滞納している税金をすべて支払うこと(完納)」です。しかし、どうしても今すぐ一括で支払うのが難しいという場合もあるかと思います。そういったケースでも、国の「猶予制度」を活用して税務署にしっかりとした計画を提示できれば、分割での支払いが認められ、差し押さえを一部解除したり、財産の処分を待ってもらえたりすることがあります。
まずは焦らずに、差し押さえがどのような流れで行われ、どうすれば解除に向けて動けるのか、具体的な仕組みから見ていきましょう。
目次
差し押さえは、国税徴収法に基づく強制的な滞納処分です。本章では仕組みと、解除に必要な基本要件を整理します。
差し押さえは、突然行われるのではなく段階的なプロセスを経て実行されます。納期限を過ぎてから督促状が届き、それでも納付がないと差押予告、最終的に実際の差し押さえへと進む仕組みです。督促状の到達から10日経過してもなお完納されない場合、税務署は財産の差し押さえができるようになります。実際には督促状到達からすぐ差し押さえに進むケースは少なく、催告や納税相談を挟んでから差押予告へ進む流れが一般的です。
参考:国税徴収法|e-Gov法令検索
差し押さえの対象となるのは、金銭的価値のある財産すべてに及びます。預金・給与・不動産・有価証券・売掛金などが代表例で、生活に最低限必要な財産は法令で差押禁止財産とされています。
一方、毎日の生活に欠かせない衣服や家具、家電などの生活必需品、また年金の一部や労災給付などは「差押禁止財産」として守られていますので、全ての財産が奪われるわけではありません。
参考:第75条関係 一般の差押禁止財産|国税庁
差し押さえを解除してもらうには、次の3つのいずれかの条件を満たし、税務署に認めてもらう必要があります。
本来の税金だけでなく、遅れた期間に応じて加算される「延滞税」や、ペナルティである「加算税」も含めたすべての金額を完納する方法です。これが最も確実で原則的な解決策となります。
一括での支払いがどうしても難しい場合、税務署に申請して「納税の猶予」や「換価の猶予」という公的な制度を認めてもらうルートです。これが認められると、分割払いがスタートし、差し押さえが解除されたり緩和されたりします。こちらについては後ほど解説します。
例えば、「現在仕事で使っている売掛金口座」を凍結されると事業が立ち行かなくなるため、代わりに「それと同等の価値がある別の財産(不動産や別の担保など)」を税務署に提供することで、特定の差し押さえを解いてもらう方法です。
ここで覚えておきたいのは、どの方法を選ぶにしても「税務署との話し合いと合意」が不可欠であるという点です。計画なく「困るから解除してほしい」と要求するだけの交渉は、原則として受け入れてもらえません。
関連記事:税務調査で追徴課税が払えない!どうなるのか対処法を解説
差し押さえを実際に解除するための手順は主に以下の3つです。
まずは手元に届いた「差押通知書」を確認し、そこに書かれている所轄税務署の「徴収部門」の担当者へ連絡を入れることです。通知書が届いたら、放置せずに数日以内には連絡を入れるのが理想的です。
連絡をする際は、これまでの滞納の経緯や、現在の売上・生活費などの財布事情を正直に話せるよう、メモを用意しておきましょう。大切なのは「支払う意思がしっかりある」という姿勢を示すことです。誠実に事実を伝えることで、その後の分割交渉などがスムーズに進みやすくなります。
参考:税の相談|国税庁
一括で払えない場合は、税務署に対して「これなら毎月確実に支払える」という具体的な分割計画を提示します。口頭だけでなく、月々の収入や家賃・生活費などの固定費、他への支払いなどをまとめた収支状況や、財産の一覧をセットにして計画書を作ると効果的です。(「毎月〇万円ずつ、〇年〇月までに完納します」という現実的な数字を提案する形になります。)
参考:国税徴収法|e-Gov法令検索 関連記事:税務調査の追徴課税は分割払いできる?払わないで済む方法は?
滞納税額の完納または納税の猶予が認められると、税務署から差押解除通知書が発行されます。この通知書が銀行などの関係機関に届くことで、凍結されていた口座や給料の差し押さえが解除になります。
手続きが反映されるまでには、完納から通常1〜2週間、銀行口座の場合でも数日から1週間ほどかかるのが一般的です。解除通知書は、無事に問題が解決した証明となる大切な書類ですので、原本をしっかりと手元に保管しておくことをおすすめします。
「どうしても税金が払えないが、差し押さえは困る」という場合、法律で用意されている制度もあります。それが「納税の猶予」と「換価の猶予」です。
震災や火災などの災害に遭ってしまった、泥棒に遭って資産を失った、本人や家族が重い病気にかかって治療費がかさんだ、あるいは経営していた事業を廃業せざるを得なくなったなど、本人に落ち度がない「やむを得ない事情」がある場合に使える制度です。認められれば最長1年間(最長2年まで延長あり)、税金の支払いを待ってもらえます。さらに、支払いが遅れた分のペナルティである延滞税が少なくなるか、ケースによっては全額免除されるという大きなメリットがあります。申請の際は、病気の診断書や災害の罹災証明書など、理由を証明できる客観的な書類を一緒に提出します。
参考:納税に関する総合案内|国税庁
換価の猶予は、事業の継続や生活の維持が脅かされる場合に認められる制度です。もし今ある財産をすべて取り上げられてしまうと、お店や会社がつぶれてしまう、あるいは明日からの生活ができなくなってしまう、といった状況のときに適用されます。
こちらも原則は納期限から6か月以内の申請が必要ですが、すでに差し押さえが始まってしまっている段階でも、税務署の判断(職権)で認められるケースがあります。
どちらの制度を利用する場合も、税務署の窓口等で「納税の猶予申請書」や「換価の猶予申請書」に記入し、自分の財産の状況(財産目録)や毎月のやり繰りがわかる書類(収支明細書)を添えて提出する流れになります。
差し押さえが解除されても、納税スケジュールを整えなければ再度差し押さえが発生する可能性があります。本章では再発を防ぐ運用を整理します。
再発防止の第一歩は、納期限の管理を行うことです。税目ごとに年間の納期限をカレンダーに登録し、1〜2週間前にリマインドが届く設定にしておくなども良いでしょう。
参考:主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日|国税庁 関連記事:延滞税の計算方法とは?税率や修正申告時の注意点なども併せて解説
所得税や消費税(個人事業主の場合)は、事前に手続きをしておくことで、指定した銀行口座から自動で引き落とされる「振替納税」という仕組みが使えます。
銀行やコンビニ等に行く手間が省けるため、「ついうっかり払い忘れていた」というミスを物理的に減らすことにつながります。さらに、本来の納期限よりも実際の引き落とし日が1か月ほど遅くなるため、手元の資金繰りに少しだけゆとりが生まれるという隠れたメリットもあります。税務署や銀行の窓口で一度登録しておくだけで使えるため、おすすめの予防策です。
参考:No.9201 振替納税のお勧め|国税庁
差し押さえにまで発展してしまうケースでは、仕事の忙しさや体調不良、日々のストレスなどが重なり、領収書の整理や確定申告の手続きを「ついつい後回しにしてしまった」という背景が少なくありません。
もし「自分一人でお金の管理や書類づくりを続けるのは限界かもしれない」と感じたら、税理士を頼るのも現実的な選択肢です。毎月の売上や経費のチェックや、先々の納税額を予測することなどで節税対策や心の余裕にもつながるでしょう。
税金の差し押さえを解除するための基本は一括での完納ですが、もしそれが難しくても、誠実な姿勢で相談し、国の猶予制度を正しく使えば、生活や仕事を壊さずに少しずつ支払っていく道が開けます。
何よりも大切なのは、「怖がって書類を無視したり、連絡を先延ばしにしたりしないこと」です。時間が経てば経つほど、税務署側も「支払う意思がないのではないか」と判断せざるを得なくなり、状況が悪化する可能性が高くなります。
税理士法人松本では、日々の確定申告のサポートはもちろん、過去に申告が漏れてしまっていた分の整理や、税務署とのやり取りに関するご相談まで対応が可能です。「過去の処理がそのままになっていて不安」「これからどう動けばいいか分からない」という段階でも、お気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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