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インボイス制度で初めて課税事業者になった個人事業主にとって、消費税の申告と納付は身近になりつつありますが、所得税の確定申告(3月15日)と消費税の申告期限(3月31日)は異なるため、スケジュールを勘違いして慌てるケースが目立ちます。
本記事では、個人事業主の消費税を「いつ・どうやって」払うのかを軸に、申告期限・納付方法・中間申告・延滞税・インボイス登録者の2割特例までを整理し、初めての消費税申告に向けて自分のケースに当てはめて判断できる材料をお伝えします。
目次
個人事業主の消費税は、課税期間(1月1日〜12月31日)ごとに申告と納付を行うものです。ここでは押さえておくべきポイントを次の3点に分けて整理します。
個人事業主の消費税及び地方消費税の申告期限と納付期限はどちらも課税期間の翌年3月31日までであり、所得税の確定申告期限(3月15日)とは異なる点に注意が必要となります。
申告期限と納付期限は同じ日付であり、どちらも翌年3月31日となっている一方、所得税とは別のスケジュールで動く点が、初めての消費税申告でつまずきやすいポイントです。期限を過ぎると延滞税や無申告加算税の対象となるため、納税資金の確保と早めの申告準備が望まれます。
参考:No.6601 申告と納税|国税庁
消費税の申告書は納税地を所轄する税務署に提出します。個人事業主の納税地は原則として住所地となり、提出方法は次の3つから選べます。
近年はe-Taxの利用が推奨されており、納税地所轄の税務署への申告書提出とダイレクト納付による口座引落しを組み合わせれば、窓口に足を運ばずに手続きを完結できます。紙で提出する場合は、税務署から送付される確定申告書(消費税用)を使う方法か、国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーで作成する方法のいずれかを選択するのが一般的です。
参考:消費税・地方消費税(個人事業者)の確定申告と納税は正しくお早めに|国税庁
振替納税は、納税者本人名義の預貯金口座からの口座引落しで国税を納付する制度であり、事前の届出が必要となるものの、一度届出すれば毎年自動で振替が継続します。
振替納税を使うと、実際の口座引落しが4月下旬の口座振替となるため、3月31日の納期限から約1ヶ月ほど資金繰りの猶予が生まれます。所得税と消費税では振替日が異なる点にも配慮が必要で、両方の引き落としタイミングを踏まえた口座残高の管理をするようにしましょう。
参考:申告所得税等、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付|国税庁
消費税の納付方法は7種類あり、自分に合った手段を選べるほか、前年の税額次第で中間申告が必要となるケースや納期限に間に合わないときのペナルティも押さえておきたい論点となります。
消費税の納付は以下7つの方法から選択できますが、手数料・納付上限額・事前手続きが異なるため、用途に合わせて選ぶのが実務的な考え方となります。
初めて消費税を納付する個人事業主の場合、手数料無料で手続きも自動化できる7種類の納付方法のなかでは、振替納税またはダイレクト納付が選ばれやすい傾向にあります。一方で、納付税額が30万円を超える見込みがある場合、スマホ決済やコンビニ納付は利用できない点にも注意が必要です。
参考:キャッシュレス納付|国税庁
中間申告は、直前の課税期間(前年)の確定消費税額(国税部分)に応じて回数が決まる制度で、個人事業主の場合は前年の国税部分が48万円を超えると中間申告の対象となります。
例えば前年の確定消費税額(国税部分)が60万円の場合、年1回の中間申告が必要となり、中間納付税額は30万円となります。なお、実際の納付時にはこれに地方消費税が加わるため、納付総額はさらに増える点に注意が必要です。前年税額が48万円超で中間申告が発生するため、インボイス登録初年度で納税が発生した個人事業主は、翌年以降に中間申告の通知が届く可能性を織り込んでおくのが望ましい考え方といえます。
参考:No.6609 中間申告の方法|国税庁
納期限(3月31日)を過ぎると、延滞税が日数に応じて課されるうえ、申告そのものを忘れていた場合には無申告加算税も追加される仕組みとなっており、税率の目安は以下のとおりです。
例えば本税10万円を納期限から2ヶ月(61日)遅れた場合、延滞税は10万円×2.4%×61日÷365日で約400円となる日割り計算になります。3ヶ月(90日)まで遅れると、2ヶ月超部分に年8.7%が適用されて合計で約2,500円前後となるのが目安であり、無申告加算税は税額50万円までなら15%のため、10万円の税額では1.5万円が上乗せされる計算となります。金額の大小にかかわらず、納期限までの納付がもっとも負担の軽い選択肢といえるでしょう。
参考:No.9205 延滞税について|国税庁
関連記事:無申告のペナルティ「無申告加算税」と「延滞税」はどう違う?
インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった小規模個人事業主には、経過措置として「2割特例」が使えるため、納税額の計算が大幅に簡略化されるうえ、事前届出も不要となります。
2割特例は、売上にかかる消費税額の20%を納付税額とする計算方式であり、インボイスの保存や仕入税額の実額集計は不要となります。
2割特例の大きな利点は、一般課税・簡易課税のどちらを選択している場合でも事前届出不要で適用できる点です。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている個人事業主は対象外となるものの、インボイス制度を機に課税事業者になったケースでは多くが対象になり得ます。
参考:2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要|国税庁
関連記事:過少申告加算税とは?計算方法やペナルティが課されないケース、対処法を詳しく解説
2割特例を適用した場合の納付額は、年商に応じて以下のように試算でき、いずれも消費税率10%・税抜売上で計算しています。
計算式はいたってシンプルで、売上税額×20%がそのまま納付額となり、年商500万円の個人事業主なら納付額は10万円、年商800万円なら16万円が目安となる一方、実際には地方消費税も含まれるため、手元に残しておくべき納税資金としては年商の約2%を確保しておくことをおすすめします。
簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択できる制度で、業種ごとのみなし仕入率で納付額を計算するもので、事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要となります。
2割特例の適用期間(令和8年9月30日まで)中は、多くのケースで2割特例のほうが有利になる傾向があり、特例期間終了後に備えて簡易課税を選択するかどうかを事前に検討しておくのが実務的な進め方といえるでしょう。簡易課税は一度選ぶと2年縛りとなるため、選択前に年商の規模と業種のみなし仕入率を比較し、試算しておく必要があります。
参考:No.6505 簡易課税制度|国税庁
初めて消費税を納める個人事業主が押さえておきたい実務ポイントを、時系列に沿って以下の3点に整理します。
インボイス登録と併せて確認しておきたい届出関係は次の3項目ですが、登録した時期と課税期間の関係で該当しない場合もあるため、自分の状況に照らして必要なものを確認するのが基本となります。
インボイス登録で課税事業者になった個人事業主は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら原則として2割特例が使えるため、簡易課税の届出は必須ではありません。ただし、個人事業主の場合、令和9年分(2027年分)以降は2割特例の適用がなくなる点には留意が必要で、そのタイミングに向けて簡易課税の検討が必要となるケースが出てきます。
参考:インボイス制度について|国税庁
消費税は「預かった税金」という性質があり、売上の一部を納税資金として別口座に分けておくと納期限前に慌てずに済むため、計算方式別の積立て目安を次のとおり整理します。
年商500万円のフリーランスが2割特例を使う場合の納税額は10万円となるため、売上の10%相当の別口座積立てを続けておけば、年間50万円のうち10万円が納税、残りが運転資金という考え方ができます。毎月の売上の一定割合を定期的に別口座へ振り替える運用は、初めての納税で実務的に機能しやすい方法といえるでしょう。
納期限までに一括で納付するのが困難な場合、申請により換価の猶予や納税の猶予が認められる制度があり、滞納処分で差押えを受けてから動くよりも、納期限前後の段階で相談するほうが選択肢が広がります。
担保の提供が原則必要となるものの、猶予対象の税額が100万円以下、または期間3ヶ月以内であれば担保は不要であり、納期限から6ヶ月以内に申請という期限があるため、納付が困難と気づいた時点で、所轄税務署の徴収担当窓口への早めの相談が望まれるところです。
参考:納期限までに納付することが困難な方へ|国税庁
関連記事:税務署からのお尋ねって何?来たときにはどう対応すればよい?
個人事業主の消費税は所得税とは別のスケジュールで申告と納付を行うため、初めて課税事業者となった段階で全体像を押さえておくことが出発点となります。自分の事業規模や業種に合わせて納付方法を選び、負担軽減の特例が使えるかどうかを確認しておくと、初年度の納税を落ち着いて進められるでしょう。納付期限を過ぎると延滞税や無申告加算税が加わるため、期限前の納税資金の準備が重要なポイントです。
税理士法人松本では、確定申告の実務支援から税務調査対応まで、個人事業主・法人のお客さまをきめ細かくサポートしています。申告の進め方だけでなく、将来のリスクを減らす帳簿づくりや、税務署とのやり取りの考え方までご案内可能です。「申告が不安」「過去の処理が正しかったか心配」という段階でもお声掛けください。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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