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個人事業主の場合も、事業が赤字になったときに所得税や個人事業税などの負担は抑えられます。では、法人が赤字になったときは、税金の負担はどうなるのでしょうか?
実は、法人には、赤字になったときには課税されない税金と、赤字でも納付が必要な税金があります。法人化をする場合などは、法人になった場合の税負担について理解しておかないと、法人化を後悔してしまう可能性もあります。法人化をする前には赤字の際にはどのような税金が非課税となり、どのような税金は納付義務が生じるのか、事前に把握しておくことが大切です。
今回は、法人が赤字になったときに課税されない税金や赤字でも納付が必要な税金などについて解説します。
目次
事業活動において、支出が収入を上回り、利益がマイナスとなっている状態を赤字といいます。赤字と聞くと、事業の存続に関わる問題のように感じるケースもありますが、赤字がそのまま倒産に結びつくわけではありません。事業を営むうえでは、売上が減少したり、設備投資にお金がかかったりといった理由で一時的に赤字が生じる場合もあるでしょう。しかし、赤字であっても手元資金が十分に確保されており、事業を継続できる状態であれば、すぐに倒産することはありません。
法人に課される可能性がある税金は次のとおりです。
・法人税
・地方法人税
・法人事業税
・特別法人事業税
・法人住民税
・消費税
・源泉所得税
・印紙税
・登録免許税
・固定資産税
・自動車税
これらの税金は、赤字のときには課税されないもの、一部のみ課税されるもの、必ず納付が必要なものの3つに分けられます。次章から、赤字の際の法人の税金について解説します。
法人が赤字になった際に、非課税となる税金は、所得を基礎として計算される税金です。具体的には、次のような税金が非課税の対象となります。
法人税とは、法人が事業活動によって得た所得に対して課される税金です。法人税の税率は、原則として、課税所得が年800万円以下の部分は15%、年800万円を超える部分は23.20%となります。
法人の所得金額は、売上などの益金から売上原価や経費などの損金を差し引いて算出した額です。決算が赤字になる場合は、売上よりも仕入額や経費が上回る状態であり、課税所得額がマイナスになることから法人税は課税されません。
地方法人税も法人の所得に対して課される国税です。平成26年度の税制改正において地方自治体の税収の格差を縮小するために創設されました。徴収された税金は、全額、地方交付税の財源として各自治体に分配される仕組みです。
地方法人税は、法人税額に10.3%を乗じて計算します。したがって、赤字の場合は法人税額が0円となるため、地方法人税も非課税となります。
参照元:総務省「地方法人税(国税)」
法人事業税とは、事業を営むにあたって利用している行政サービスの費用を負担する目的で課税される地方税です。法人住民税は法人も地域社会の構成員であることから課される税金であるのに対し、法人事業税は事業活動に対して課される税金であるという点に違いがあります。
法人事業税には、付加価値割、資本割、所得割、収入割の4つがあります。業種によって課される区分の組み合わせは異なりますが、資本金1億円以下の普通法人の場合は、所得割のみが課されます。所得割は、所得額に税率を乗じて算出しますが、決算が赤字の事業年度では所得額が0円となるため、赤字の場合は法人事業税の納付は不要です。
しかし、資本金1億円超の企業や電気供給業、ガス供給業、保険業などの法人では、所得割とは異なる算出方法が用いられるため、赤字でも法人事業税の負担が発生します。
参照元:総務省「法人事業税」
特別法人事業税は、法人事業税と一体で課税される国税です。平成31年度の税制改正により創設された税金で、地方間の税収格差の是正を目的に地方交付税の原資として利用されます。課税対象は法人事業税の申告納付義務のある法人です。赤字のときには所得額がマイナスになるため、法人事業税に所得割が課される法人では、特別法人事業税も課税されません。ただし、資本金1億円超の法人や電気供給業、ガス供給業、保険業などの法人では、赤字であっても特別法人事業税の納付が求められます。
参照元:東京都「特別法人事業税」
法人が赤字になった場合に、一部のみ非課税となり、一部の負担を求められる税金が法人住民税で、都道府県に支払う都道府県民税と市町村に支払う市町村民税をまとめて納付する仕組みです。法人住民税は、地域で事業を営む法人に行政サービスの負担金を求める制度であり、均等割と法人税割の2つで構成されています。
均等割とは、法人に等しく課される税金で、資本金の額と従業者数によって一定の額が課されます。もう一つの法人税割は、法人税額に税率をかけて求める税割です。法人税割の税率は、道府県民税が1.0%、市町村民税が6.0%です。赤字の法人の場合、課税所得額がマイナスになるため、法人住民税の法人税割については課税されません。一方で、所得額にかかわらず、資本金の額と従業者数で決められた額を納付する義務がある均等割は、赤字であっても納付する必要があります。
都道府県民税の均等割と市町村民税の均等割額は、次のように決められています。
赤字になっても納付が必要になる税金は、以下の6つです。
消費税は、商品やサービスを提供する際に課される税金であり、税金を負担する人と納付する人が一致しない間接税です。消費税の負担者は消費者ですが、納税は代金と一緒に税金を預かった事業者が行う仕組みです。
法人のすべてが消費税の課税事業者ではありません。したがって、消費税の免税事業者であれば、赤字・黒字にかかわらず消費税の納付義務は生じません。
一方、資本金が1,000万円以上の法人、前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超えている法人、インボイス発行事業者として登録している法人は、消費税の課税事業者であり、納税の義務があります。
ただし、消費税の納付方法には、売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を差し引いて、差額を納税する仕組みが採用されています。したがって、一般課税方式で消費税の納付額を計算している法人は、大型の設備投資などをした場合、預かった消費税よりも支払った消費税が上回るケースがあります。その場合は、消費税の納付義務は生じず、還付手続きを行えば納め過ぎた消費税が還付される可能性があります。
一方、業種ごとに割り当てられた「みなし仕入れ率」を使って消費税の納付額を計算する簡易課税を採用している法人では、売上にみなし仕入れ率をかけて消費税の納税額を決定するため、赤字であっても消費税の納付義務が生じます。
従業員などに支払う給与から徴収した源泉所得税は、法人の事業所得ではなく、従業員個人の所得に課される税金です。そのため、たとえ法人の決算が赤字になっても、給与の支払いをした月の翌月10日までに納付しなければなりません。また、従業員が常時10人未満の小規模事業所で、源泉所得税の納期の特例に関する申請が認められている法人は、7月10日と翌年の1月20日までに半年分をまとめて納付することができます。
この納付期限までに源泉所得税を納付しなかった場合は、不納付加算税と呼ばれるペナルティが課される点に注意が必要です。
印紙税とは、契約書や領収書など、特定の文書を作成した際に課される税金です。印紙税は、印紙税法によって課税対象となる20種類の文書が定められています。また、文書の種類によって印紙税の額も細かく決められており、印紙税を納付する際には、金額分の収入印紙を書類に貼付するルールです。また、貼付した収入印紙と文書の台紙にまたがるように印鑑または署名で消印することで、納税が完了します。
印紙税も赤字であっても納付しなければならない税金です。
印紙税の対象となる課税文書と印紙税の額については国税庁のホームページから確認できます。
参照元:国税庁「印紙税額一覧表」
登録免許税とは、土地や建物、船舶、航空機などの所有権、会社の設立や各種免許・資格の取得時などに、法務局へ登記・登録をする際に発生する税金です。手続きごとに登録免許税の税率は定められており、金額分の収入印紙で納付する方法のほか、金融機関で現金納付する方法、インターネットバンキングなどで納付する方法があります。
登録免許税は登記手続きの際に納付が義務付けられている税金であり、法人の決算状況にかかわらず納付が必要です。
固定資産税は、1月1日時点で土地や建物、機械、設備などの固定資産を保有している人に対して課される税金です。不動産を保有している限り、毎年支払いが生じます。
固定資産税は、固定資産の資産価値に応じて決定される税金であり、法人の事業状況には関係しません。したがって、赤字であっても、オフィスや工場、製造設備などを所有している場合は、資産価値に応じた固定資産税の納付が求められます。
自動車税は毎年4月1日時点で自動車を保有している人に対して課される税金です。財産税の一種ですが、道路使用者に道路の整備費などの負担を求める性格もあります。自動車税は、法人・個人にかかわらず自動車の保有者に課される税金であり、法人が事業用の自動車を保有している場合は、赤字であっても納付が必要です。
本来、事業は黒字の状態が健全な経営状態です。そのため、法人の決算が赤字になると不安になることもあるかもしれません。しかし、一時的な赤字であれば、それほど不安になる必要はありません。実は、法人が赤字になることで生じるメリットもあります。
ご紹介してきたように、赤字の法人は課税対象となる所得が0円になるため、法人税の負担が発生しません。さまざまな税金が課される中でも法人税の負担は大きいものです。さらに、法人税の額をもとに計算される地方法人税、法人住民税の法人税割、法人事業税、特別法人事業税も赤字であれば課税されません。
赤字でも納付が必要な税金はあるものの、大きな割合を占める法人税をはじめとした各種税金の税負担を抑えられる点は赤字のメリットです。
青色申告をしている法人の場合、赤字を翌年以降に繰越せる欠損金の繰越制度を利用できます。個人事業主の場合は赤字の繰越期間は最大で3年間ですが、法人の場合は最大10年にわたって繰越すことができます。赤字の繰越しができれば、黒字の事業年度に赤字分を損金として計上できるため、将来の課税所得額を圧縮でき、法人税など、課税所得をもとに計算される税金の負担を軽減できます。10年間の繰越期間が認められていれば、赤字額が大きい場合でも全額を相殺できる可能性があります。
ただし、資本金1億円を超える法人の場合は、相殺できる黒字の額に限度があります。
青色申告をしている法人は、欠損金の繰越しではなく、繰戻しを行うこともできます。繰戻しとは、当期に生じた赤字を前年の黒字と相殺して、既に納めた税金の還付を受けることです。資金繰りなどに不安がある場合などは、繰戻し還付の申請をすることで、納め過ぎた税金を受け取れるため、資金繰りの悪化を早期にカバーできます。ただし、繰戻し還付の対象は前事業年度の1年間のみです。
法人が赤字になった場合は、非課税となる税金と赤字でも納付が必要な税金があります。具体的には、課税所得に対して課される法人税、地方法人税、法人住民税の法人税割などは赤字であれば課税されません。ただし、法人事業税・特別法人事業税は法人の規模や業種によって赤字でも納付が必要になる場合があります。
また、赤字になった場合は青色申告をしている法人であれば、欠損金の繰越しや繰戻しの制度を利用して、将来の税負担を軽減したり、支払った税金の還付を受けることが可能です。
赤字はできれば避けたいと思うかもしれません。しかし、大型の設備投資などが必要な場合は、赤字による税金の負担軽減が可能になる側面も考えながら、事業計画を立てることが大切です。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者20万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在14名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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