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個人事業主は事業規模が小さいことが多く、取引先の数も多くはないため、経営状況は取引先に大きく影響されます。経営セーフティ共済は、取引先が倒産した場合のリスクに備える制度です。個人事業主が経営セーフティ共済に加入すると節税効果を得られるという噂もありますが、本当に節税効果は得られるのでしょうか。
今回は、経営セーフティ共済の概要や個人事業主が加入した場合の節税効果などについて解説します。
目次
経営セーフティ共済とは、国が全額出資する中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)が運営する共済制度です。経営セーフティ共済と呼ばれることが多いですが、正式には「中小企業倒産防止共済制度」といいます。
取引先が倒産してしまうと、取引先を失うだけでなく、売掛金などの回収が難しくなるおそれがあります。売掛金の回収が不能となれば、資金繰りが悪化する可能性もあるでしょう。経営セーフティ共済は、取引先の倒産などの緊急事態において、資金繰りをサポートし、中小規模の事業者の連鎖倒産を防ぐ目的で創設されました。
個人事業主が経営セーフティ共済に加入すると、どのようなメリットを得られるのでしょうか。
直接の取引先が倒産をしたことで売掛金債権と前渡金返還請求権の回収が難しくなったときには、共済金の借入ができます。ただし、借入をするためには、申請をし、審査を受けなければなりません。
共済金の借入れは個人事業主でも可能です。しかし、経営セーフティ共済に加入してから6ヶ月以上が経過しており、6ヶ月以上の掛金を納付しているという要件を満たしていない人は借入の対象外です。そのほか、取引先の倒産が、加入後6か月未満で生じた場合も、共済金の借入れができません。
また、貸付請求は、制度上の倒産事由が発生した日から6ヶ月以内に行なうことが求められます。
取引先の倒産とは、以下の事態に該当する場合を指します。
・法的整理
破産手続きや再生手続き、更生手続きの開始、特別清算開始の申し立てがなされている場合
・取引停止処分
手形交換所(電子交換所)に参加する金融機関から取引停止処分を受けている場合
・私的整理
債務整理の委託を受けた弁護士等によって共済契約者に対し、支払いを停止する旨の通知がされている場合
・でんさいネットの取引停止処分
でんさいネット(株式会社全銀電子債権ネットワーク)に参加する金融機関によって、取引停止処分を受けている場合
・災害による不渡り
甚大な災害の発生によって手形などが「災害による不渡り」になっている場合
・災害によるでんさいの支払不能
甚大な災害の発生によってでんさいネットが記録する電子記録債権が「災害による支払不能」になっている場合
・特定非常災害による支払不能
特定非常災害によって代表者が死亡等をした場合に弁護士等によって、共済契約者に対し支払を停止する旨の通知がされている場合
共済金の借入には一定の条件があります。貸付請求額が少額であっても次のいずれの額にも達していないときは、借入ができません。
・50万円(共済契約締結時の掛金月額が5,000円で共済契約が効力を生じた日から共済金の借入手続きの日までの期間が6ヶ月以上10ヶ月未満である共済契約者の場合は、5,000円に掛金の納付をすべきであった月数を乗じて得た額の10倍に相当する額)
・共済契約者の月間の総取引額の20%に相当する額
そのほか、共済金の借入手続きをした共済契約者本人に倒産または倒産に準ずる事態が生じているときや、すでに借り入れた共済金の返済を怠っているときなど、ほかにもいくつかの要件があります。
参照元:共済サポートnavi「共済金の借入れについて」
共済金の返済期間は、借入の額によって変わってきます。借入額ごとの返済期間と返済方法を表で示すと次のようになっています。
出典元:共済サポートnavi「共済金の借入条件」
取引先が倒産したときは、前納掛金を除く納付済み掛金総額の10倍相当額と、回収困難となった売掛金債権等の額のいずれか少ない額(最高8,000万円)を貸付限度額として借入ができます。しかし、事業を営んでいくうえでは、取引先の倒産には関係なく、資金繰りが悪化するケースや一時的に資金が必要となるケースもあるでしょう。
そのような場合に利用できるのが一時貸付金です。一時貸付金は、機構解約の際に支給される解約手当金の95%を上限として借入できますが、掛金納付月数や掛金総額によって限度額はかわります。
借入限度額は、掛金の納付月数によって次のように決められています。
<納付月数40か月未満の共済契約者の借入限度額>
<納付月数40か月以上の共済契約者の借入限度額>
出典元:共済サポートnavi「一時貸付金制度」
一時貸付金の借入期間は1年間です。利率は金融情勢等によって変動するものの、銀行などから借り入れを行う場合に比べると比較的低い利率で借入ができます。ただし、利率は常に変動するため、借入の際には銀行も含めて金利を確認する必要があります。なお、令和6年4月1日時点における一時貸付金の利率は年0.9%となっています。
借り入れたお金は、原則として、一年後に一括で返済するルールとなっています。また、一時貸付金は、経営セーフティ共済に加入してから12ヶ月を経過し、掛金を12ヶ月以上納付している人が利用できます。
参照元:共済サポートnavi「一時貸付金制度」
経営セーフティ共済に支払う月々の掛金は、加入者が自由に決定できます。ただし、掛金の範囲は決められており、月々の最低額は5,000円、最高額は20万円までとなっています。また、掛金の設定は5,000円単位で、掛金は加入申込時に設定しますが、加入後に変更することもできますす。
納付した掛金は、事業所得を得ている個人事業主の場合、全額を必要経費として計上することができ、前納分の掛金については、前納期間が1年以内の場合は、支払った日が属する年分の必要経費に計上できます。確定申告時には「特定の基金に対する負担金等の必要経費算入に関する明細書」に必要事項を記入したうえで、確定申告書に添付しなければなりません。
ただし、個人事業主が経営セーフティ共済の掛け金を経費に計上できるのは、事業所得についてのみです。不動産所得等については、掛金の経費計上が認められません。
経営セーフティ共済を解約し、再加入することは可能です。しかし、令和6年10月1日以後に解約し、再加入した場合は、解約日から2年を経過する日までに支払う掛金については経費に計上することができない点に注意が必要です。
参照元:共済サポートnavi「経営セーフティ共済の掛金」
掛金は掛け捨てではありません。12ヶ月以上掛金を納めている場合は、解約をする際に解約手当金を受け取れます。ただし、解約の種類や掛金の納付月数によって受け取れる解約手当金の額は変わります。
解約手当金は、掛金総額×支給率で決定されます。掛金総額とは、納付した掛金から、共済金貸付額の10分の1、及び共済金や一時貸付金の償還を怠ったために掛金から償還・違約金に充てられた額を控除した額です。
解約の種類には、自己都合での解約にあたる「任意解約」、共済契約者の死亡や解散、会社分割、事業の全部譲渡などがあった場合は「みなし解約」、契約者が12ヶ月分以上の掛金の滞納をしたときなどに中小機構によって行われる「機構解約」の3種類があります。
解約手当金の支給率は、以下のとおりです。
出典元:共済サポートnavi「共済契約の解約」
個人事業主も経営セーフティ共済に加入できますが、加入にあたってはいくつかの要件を満たさなければなりません。経営セーフティ共済の個人事業主の加入要件は以下の通りです。
経営セーフティ共済への加入にあたっては、1年以上事業を継続していることが条件となっています。したがって、開業と同時に経営セーフティ共済に加入することはできません。
業種ごとに常時使用する従業員数の上限数が決められており、従業員の数が上限を超えている場合は加入が認められません。なお、常時使用する従業員とは原則として2ヶ月を超えて雇用されており、週当たりの所定労働時間が通常の従業員と概ね同等である人で、事業主、家族従業員、雇用期間2ヶ月以下のアルバイト等は含みません。
業種ごとの従業員数の上限は以下のとおりです。
チューブ製造業と工業用ベルト製造業を除く)
経営セーフティ共済の加入にあたっては、事業所得または不動産所得があり、確定申告を行っていることも要件の一つです。
経営セーフティ共済は、取引先の倒産時に備えることを第一の目的とした共済です。そのため、雇用契約以外の契約によって他者の事業に従属する形で独立経営をしているかどうかも加入時の要件となります。
ここまでご紹介してきた4つの要件を満たす場合であっても、以下のいずれかに該当する人は、経営セーフティ共済に加入できません。
参照元:共済サポートnavi「経営セーフティ共済の加入資格」
経営セーフティ共済の掛金は、全額、経費に計上できます。そのため、個人事業主が経営セーフティ共済に加入した場合、節税効果があるといわれることもあります。
経営セーフティ共済の掛金は、月5,000円~20万円の間であれば、5,000円単位で変更ができます。そのため、利益が大きくなりそうな年に掛金を増やすと、その年分の税金の負担軽減につながります。
しかし、経営セーフティ共済を解約すると解約手当金が支給されます。掛金を経費に計上していた場合、解約手当金は事業収入として課税の対象となります。したがって、経営セーフティ共済の加入は確実な節税対策とは言い切れません。利益が大きく出ているタイミングで解約をすると税の負担額も大きくなるため、加入時には出口戦略を立て、事業を縮小するタイミングなどで解約を検討するとよいでしょう。
事業規模の小さい個人事業主は、取引先の倒産などによる影響を受けやすく、連鎖倒産といった事態が発生する恐れもあります。経営セーフティ共済は、そのような事態に備えるための共済です。
一定の要件を満たした個人事業主は、経営セーフティ共済に加入できます。事業所得を得ている場合、掛金は全額、経費として計上できるため一時的な節税効果を得られますが、解約の時に受け取る解約手当金は課税対象となります。したがって、解約のタイミングでは税負担が増える可能性もあるため、経営セーフティ共済の加入によって、確実な節税効果を得られるわけではありません。
経営セーフティ共済は、節税対策のためではなく、取引先の倒産に備えた共済であることを十分に理解したうえで加入することが大切です。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者30万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在15名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
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