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子育てには、食費や教育費、医療費、住宅費などさまざまな支出がかかります。こうした子育て世帯の負担を軽減するため、税制では扶養控除や医療費控除、住宅ローン控除など複数の制度が設けられています。
また、2025年度税制改正では、大学生年代の子を扶養する世帯に関係する「特定親族特別控除」が創設されました。2026年分についても扶養親族の所得要件が見直されるなど、子育て世帯に関係する税制は変更が続いています。
この記事では、子育て世帯が利用できる主な控除をはじめ、2025〜2026年の税制改正、年末調整・確定申告の手続き、申告時の注意点について解説します。
目次
「子育て税制」という名称の一つの制度があるわけではありません。
この記事では、子どもを扶養していることや、子育て世帯が住宅を取得・改修したことなどを要件として利用できる税制上の措置をまとめて「子育て税制」と呼びます。代表的なものとして、次の制度が挙げられます。
それぞれ対象となる子どもの年齢や所得、納税者本人の所得、住宅の性能などの要件が異なります。
子どもがいるだけですべての制度を利用できるわけではないため、自分の世帯が対象になる制度を確認することが大切です。
子育て世帯が利用できる税制を理解する際には、「所得控除」と「税額控除」の違いを押さえておきましょう。
所得控除は、所得税を計算する前に所得から一定額を差し引く仕組みです。扶養控除やひとり親控除、医療費控除、生命保険料控除などが該当します。
一方、税額控除は、所得に税率を掛けて計算した所得税額から一定額を直接差し引く仕組みです。住宅ローン控除などが代表例です。
同じ「控除」でも計算方法が異なるため、混同しないようにしましょう。
子育て世帯に関係する制度として「児童手当」もありますが、これは税金から一定額を差し引く税制上の控除ではなく、一定の子どもを養育している方に支給される手当です。
現在の児童手当は高校生年代までが対象で、3歳未満は原則月額1万5,000円、3歳以上高校生年代までは原則月額1万円、第3子以降は月額3万円が支給されます。
また、2026年度から始まった「子ども・子育て支援金制度」は、医療保険料とあわせて支援金を拠出し、児童手当の拡充などの子育て施策を支える仕組みです。
「税金を減らす制度」「給付を受ける制度」「社会保険を通じて負担する制度」は分けて整理しましょう。
【出典元】 こども家庭庁|児童手当制度のご案内
2025〜2026年には、子どもを扶養する世帯に関係する税制が複数見直されています。
特に確認したいのは、大学生年代の子に関する控除、扶養親族の所得要件、生命保険料控除、住宅関連税制です。
2025年度税制改正では、新たに「特定親族特別控除」が創設されました。対象となるのは、納税者と生計を一にする19歳以上23歳未満の親族で、扶養控除の所得要件を超えているものの、一定の所得範囲に収まっている場合です。
2025年分では、合計所得金額が58万円超123万円以下の場合が対象となり、所得金額に応じて最大63万円の所得控除を受けられます。合計所得金額が85万円を超えると控除額は段階的に減少します。
また、2025年分から扶養親族の合計所得金額要件も48万円以下から58万円以下へ引き上げられました。
さらに2026年度税制改正によって、2026年分の所得税では扶養親族などの所得要件が62万円以下へ引き上げられています。これに伴い、2026年分の特定親族特別控除は、原則として特定親族の合計所得金額が62万円超123万円以下の場合が対象となります。
2025年と2026年では所得要件が異なるため、申告する年分を確認して判定しましょう。
【出典元】 国税庁|令和7年分 特定親族特別控除 国税庁|令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等PDF
23歳未満の扶養親族がいる場合、一定の新生命保険契約に係る一般生命保険料控除が拡充されています。
通常、新契約に係る一般生命保険料控除の所得税の控除限度額は4万円ですが、23歳未満の扶養親族がいる場合、2026年分・2027年分については最高6万円となります。
しかし、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除を合わせた生命保険料控除全体の上限12万円は変わりません。
契約時期や保険の種類によって計算方法が異なるため、生命保険料控除証明書を確認して手続きを行いましょう。
住宅関連の税制も子育て世帯にとって重要です。2025年は、子育て世帯・若者夫婦世帯が一定の新築住宅などへ入居した場合、住宅ローン控除の借入限度額を上乗せする措置が実施されました。
さらに2026年度税制改正では住宅ローン控除の適用期限が5年間延長され、2026年1月1日から2030年12月31日までに入居する場合も一定の要件で適用できます。省エネ性能の高い既存住宅についても、子育て世帯などへの措置が拡充されています。
子育て対応リフォームに係る所得税の税額控除についても延長され、一定の要件を満たし、2028年12月31日までに居住した場合が対象です。
ここからは、子育て世帯が利用する機会の多い所得控除を確認していきます。
所得控除は所得税の計算前に所得から一定額を差し引く制度であるため、適用漏れがあると本来より多く所得税を納める可能性があります。
所得税の扶養控除は、その年の12月31日時点で16歳以上の一定の扶養親族がいる場合に利用できます。
2026年分では、扶養親族の合計所得金額が62万円以下であることなどが要件です。控除額は一般の控除対象扶養親族で38万円です。19歳以上23歳未満の「特定扶養親族」に該当する場合は63万円となります。
一方、16歳未満の子は所得税の扶養控除の対象ではありません。アルバイトなどで子ども自身に収入がある場合は、その年の所得によって適用可否が変わるため、年間所得を確認しましょう。
19歳以上23歳未満の子などがアルバイトをして扶養控除の所得要件を超えた場合でも、すぐに親の所得控除がゼロになるとは限りません。
2025年から創設された特定親族特別控除により、一定の所得範囲であれば子などの所得に応じた所得控除を受けられます。
2025年分では合計所得金額58万円超85万円以下の場合に63万円の控除を受けられ、その後は所得が増えるにつれて段階的に減少し、123万円を超えると対象外となります。
2026年分については、特定親族特別控除の対象となる所得の下限も62万円超へ変更されています。大学生年代の子がアルバイトをしている家庭では、特定親族特別控除まで含めて確認しましょう。
子育て世帯では、扶養控除以外にも複数の所得控除を利用できる場合があります。
たとえば、一定の要件を満たすひとり親は35万円のひとり親控除を受けられます。2026年分では、本人の合計所得金額が500万円以下であることや、生計を一にする子の総所得金額等が62万円以下であることなどが要件です。
また、自分や生計を一にする家族の医療費を支払い、その金額が一定額を超えた場合には医療費控除を利用できます。
医療費控除額は原則として、「実際に支払った医療費-保険金などで補てんされる金額-10万円」で計算します。総所得金額等が200万円未満の場合は、10万円ではなく総所得金額等の5%を差し引きます。
生命保険料を支払っている場合には、生命保険料控除を利用できる可能性もあります。
【出典元】 国税庁|医療費を支払ったとき(医療費控除)
子育てをきっかけに住宅の購入やリフォームを検討する家庭も多いでしょう。
住宅取得は金額が大きいため、住宅ローン控除などを利用できるか確認することが重要です。
2026年に入居する場合、19歳未満の扶養親族がいる方や、本人または配偶者の一定の年齢要件を満たす若者夫婦世帯は、住宅ローン控除で借入限度額の上乗せを受けられる場合があります。
2026年入居の新築住宅等について、代表的な借入限度額は次のとおりです。
認定住宅の場合、控除期間は13年間で、住宅ローン等の年末残高のうち借入限度額までの金額に0.7%を掛けて控除額を計算します。
なお、2025年入居では子育て世帯などの新築住宅に対する借入限度額は、認定住宅5,000万円、ZEH水準省エネ住宅4,500万円、省エネ基準適合住宅4,000万円でした。2025年と2026年では一部の限度額が異なるため、入居年を確認しましょう。
【出典元】 国土交通省|住宅ローン減税 国土交通省|令和8年度税制改正概要
一定の子育て対応リフォームを行った場合には、所得税の税額控除を受けられる可能性があります。対象工事の例は次のとおりです。
現在の制度では、19歳未満の扶養親族がいる方、または本人・配偶者が一定の年齢要件を満たす方などが対象です。
基本となる10%控除については、子育て対応改修に係る標準的な工事費用相当額のうち250万円までが対象となるため、税額控除は最大25万円です。一定の増改築などをあわせて行った場合は、別途5%控除の対象となる場合もあります。
実際の工事代金をそのまま10%控除する制度ではない点に注意しましょう。
親や祖父母から住宅購入資金の援助を受ける場合には、贈与税にも注意が必要です。
2024年1月1日から2026年12月31日までの間に、父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受け、一定の要件を満たした場合には、贈与税の非課税措置を利用できます。
非課税限度額は、受贈者1人につき、以下の金額になります。
ただし、非課税の範囲内でも手続きが不要になるわけではありません。
この特例を利用する場合は、原則として贈与を受けた翌年2月1日から3月15日までに、一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。資金援助を受ける場合には、事前に贈与税の取り扱いを確認しましょう。
【出典元】 国税庁|直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税 国税庁|贈与税の申告手続
利用する控除によって、年末調整で手続きできるものと、確定申告が必要なものがあります。会社員でも、すべて勤務先の年末調整で完結するとは限りません。
会社員などの給与所得者は、扶養控除や生命保険料控除などについて勤務先の年末調整で手続きできます。
扶養控除については「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などに必要事項を記載します。特定親族特別控除を年末調整で受ける場合も、所定の申告書を給与の支払者へ提出する必要があります。
生命保険料控除では、原則として保険会社などから交付される生命保険料控除証明書などを使用します。年末調整の前に、子どもの年間所得の見込みや控除証明書を確認しましょう。
住宅ローン控除を初めて受ける年は、会社員であっても原則として確定申告が必要です。
初年度は、控除額の計算明細書や住宅に関する書類などを添えて確定申告します。給与所得者の場合、2年目以後は年末調整で住宅ローン控除を受けられます。医療費控除も年末調整では手続きできないため、適用を受ける場合は確定申告が必要です。
子育て対応リフォームに関する税額控除についても確定申告が必要であり、増改築等工事証明書などを準備します。
年末調整で控除を申告し忘れた場合でも、そのまま控除を受けられなくなるとは限りません。
確定申告の義務がない給与所得者などで、控除を反映することによって源泉徴収された所得税が還付される場合には、還付申告を行えます。還付申告は原則として、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。
しかし、すでにその年分の確定申告書を提出している場合には、「更正の請求」が必要になることがあります。
子育てに関係する税制では、子どもの年齢や所得、夫婦の申告内容、補助金の有無などをもとに適用可否を判断します。
税務署から確認を受けた場合に説明できるよう、根拠資料も整理しておきましょう。
共働き世帯では、同じ子どもを夫婦それぞれが扶養親族として重複して申告しないよう注意が必要です。
複数の子どもがいる場合に、夫が長男、妻が長女を扶養親族として申告することなどは可能ですが、同じ子を夫婦双方の扶養親族として申告することはできません。
また、子どもがアルバイトをしている場合には、年初の見込みと実際の年間所得が異なることがあります。特に2025年と2026年では扶養親族の所得要件が異なるため、その年分の所得を確認しましょう。
医療費控除を計算するときは、実際に支払った医療費から、入院給付金や高額療養費、出産育児一時金などの「保険金などで補てんされる金額」を差し引きます。
また、子育て対応リフォームについて補助金を受け取った場合には、その額を反映して税額控除を計算します。
補助金を受け取ったにもかかわらず、支出額全額をもとに控除を計算しないよう注意しましょう。
住宅を購入する際に親や祖父母から多額の資金援助を受けた場合には、贈与税の申告漏れにも注意が必要です。
「家を買うためのお金だから贈与税はかからない」と一律に判断することはできません。
住宅取得等資金の贈与税の非課税措置には、贈与者・受贈者、住宅、入居時期などについて要件があり、特例を利用するには贈与税の申告も必要です。資金援助を受ける予定がある場合には、受け取る前に税務上の取り扱いを確認しましょう。
子育て税制を利用する場合には、申告内容を裏付ける資料を整理しておきましょう。たとえば、次のような資料があります。
申告が終わったからすぐに処分するのではなく、必要な資料をまとめて管理しておきましょう。
年末調整や確定申告を終えた後に、「扶養控除を入れ忘れていた」「子どもの所得が想定より多かった」などの誤りに気づくこともあります。
税金を多く納めていたのか、不足していたのかによって対応が異なります。
会社員など確定申告の義務がない方が年末調整で控除を申告し忘れ、所得税を納め過ぎていた場合には、還付申告によって還付を受けられる可能性があります。
一方、すでに確定申告書を提出した後で、控除漏れなどにより税額を多く申告していた場合には、原則として「更正の請求」を行います。
更正の請求は原則として法定申告期限から5年以内です。控除漏れに気づいた場合は、申告した年分や内容を確認し、適切な手続きを選びましょう。
扶養控除の対象にならない子を扶養親族として申告していたなど、本来より少ない税額を申告していた場合には修正申告が必要です。
修正申告によって新たに納める税額には延滞税がかかり、状況によっては加算税が課される場合もあります。
子どものアルバイト収入が想定を上回った場合などは、扶養控除や特定親族特別控除の適用関係を確認しましょう。
税務署から控除の内容について問い合わせを受けた場合は、何について確認されているのかを整理しましょう。
扶養控除であれば子どもの年齢や所得、医療費控除であれば医療費と保険金などの金額、住宅関係の控除であれば契約書や証明書などを準備します。
資料が不足している場合や、過去の申告内容に誤りがある可能性がある場合には、税理士へ相談したうえで対応する方法もあります。
子育て世帯が利用できる税制には、扶養控除、特定親族特別控除、ひとり親控除、医療費控除、生命保険料控除、住宅ローン控除、子育て対応リフォームの税額控除などがあります。
2025年には特定親族特別控除が創設され、扶養親族の所得要件も見直されました。さらに2026年分では扶養親族の所得要件が62万円以下へ引き上げられています。
住宅ローン控除や子育て対応リフォーム税制も延長されているため、住宅の購入やリフォームを予定している場合には、入居年や住宅性能、工事内容なども確認しましょう。
一方、適用要件の判定を誤ると、控除を受けられなかったり、後から修正申告が必要になったりする可能性があります。
「子どものアルバイト収入が増え、扶養控除を受けられるかわからない」
「特定親族特別控除が適用できるか確認したい」
「住宅購入やリフォームで利用できる税制を知りたい」
「年末調整や確定申告で控除を申告し忘れた」
このような場合には、早めに税理士へ相談し、自分の世帯に適用できる制度と必要な手続きを整理しておきましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者30万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在15名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
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