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行政書士として独立・開業している場合、依頼者から受け取った報酬や経費を整理し、原則として確定申告を行う必要があります。
行政書士の業務では、報酬のほか、依頼者に代わって支払った手数料などが発生するため、売上と立替金を適切に区分することが大切です。また、行政書士報酬の源泉徴収や、インボイス登録後の消費税にも注意しなければなりません。
この記事では、行政書士の確定申告について、売上・経費の処理や税金、申告の流れ、税務調査で注意したいポイントを解説します。
目次
行政書士自身が確定申告を行うことはできますが、第三者へ申告書の作成や税務相談を依頼する場合には、依頼先に注意が必要です。
行政書士と税理士はいずれも国家資格ですが、法律上認められている業務の範囲が異なります。
他人の依頼を受けて確定申告書を作成したり、税務署への申告を代理したりする業務は、原則として税理士の業務です。税理士には、主に次の3つの独占業務があります。
したがって、行政書士資格を持っているだけでは、顧客の所得税や法人税の申告書を作成したり、具体的な税額計算について税務相談に応じたりすることはできません。これは報酬を受け取る場合だけではなく、無償で行う場合も基本的には同様です。
行政書士が自分自身の確定申告書を作成することには問題ありませんが、「確定申告を誰かに任せたい」「経費にできるか判断してほしい」「税務署への対応を依頼したい」といった場合は、税理士へ相談しましょう。
記帳そのものは、必ずしも税理士にしかできない業務ではありません。たとえば、あらかじめ決められたルールに従って領収書の内容を会計ソフトへ入力したり、銀行口座の入出金と請求データを照合したりする作業であれば、税理士以外が対応できる場合があります。
ただし、実際の記帳では、「この支出は必要経費になるのか」「どの年の売上として計上するのか」「消費税の課税区分をどうするのか」など、税務判断が必要になることがあります。
単純な入力作業と税務判断の境界が曖昧になることもあるため、確定申告まで含めて会計処理を依頼したい場合は、税理士へ相談する方が安心です。
個人で行政書士事務所を経営している場合、1月1日から12月31日までの収入と必要経費を集計し、所得税額を計算します。
しかし、売上が発生しただけで必ず所得税がかかるわけではありません。確定申告が必要かどうかは、必要経費や所得控除なども踏まえて判断します。
個人で行政書士事務所を開業し、継続的・独立して業務を行っている場合、行政書士業務から生じた所得は原則として「事業所得」として扱います。事業所得は、おおむね次のように計算します。
たとえば、年間の行政書士報酬が700万円、事務所家賃や通信費などの必要経費が250万円であれば、必要経費を差し引いた450万円が事業所得を計算する基礎となります。
青色申告を選択して一定の要件を満たしていれば、青色申告特別控除などを利用できる場合もあります。なお、所得税は売上額そのものに課税されるのではなく、必要経費や各種控除を反映して計算します。
会社員として働きながら副業で行政書士業務をしている場合は、業務の規模や継続性、営利性などによって事業所得または雑所得として扱われます。
給与収入が2,000万円以下で、原則として1か所から給与を受け、その給与について源泉徴収や年末調整が行われている場合、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計額が年間20万円以下であれば、原則として所得税の確定申告が不要となる場合があります。
しかし、所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になることがあるため注意しましょう。
【出典元】 国税庁|No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
行政書士の確定申告では、1年間の報酬を正しく集計するとともに、業務に必要な費用を漏れなく経費として処理することが重要です。
特に、顧客から受け取った金額のすべてが行政書士報酬とは限らない点に注意しましょう。
行政書士業務では、報酬のほかに、顧客に代わって行政機関などへ支払う手数料を一時的に立て替える場合があります。たとえば、次のように区分して管理するとわかりやすくなります。
特に注意したいのが、12月に業務が完了し、報酬が翌年1月に入金された場合です。事業所得では、原則として実際に入金された日だけを基準にするのではなく、その年に収入すべき権利が確定しているかを確認して売上を計上します。
「入金された金額だけを年間売上として集計する」と、年末時点の未収報酬が漏れてしまう可能性があります。請求書の発行日、業務完了日、入金日をそれぞれ確認できるようにしておきましょう。
行政書士業務を行うために直接必要となった支出は、必要経費として計上できます。代表的な経費には、次のようなものがあります。
しかし、支払ったものがすべて経費になるわけではありません。個人的な飲食代や家族旅行の費用、日常生活で使用する衣服など、行政書士業務との関係を説明できない支出は原則として経費にできません。
また、高額なパソコンや設備などは、購入した年に全額を必要経費とせず、固定資産として減価償却が必要になる場合があります。
自宅の一部を行政書士事務所として使用している場合、家賃や電気代、インターネット料金などのうち、事業で使用している部分を必要経費として計上できます。これを「家事按分」といいます。
たとえば、自宅の床面積100㎡のうち20㎡を専用の事務所として使用している場合、床面積など合理的な基準により家賃の20%を事業分として計算する方法が考えられます。
自動車についても同様です。顧客先や官公庁への移動に使用する一方、休日の買い物や旅行にも使用している場合は、走行距離や使用日数などをもとに事業使用分を計算します。
家事按分で重要なのは、「なぜその割合にしたのか」を説明できることです。業務日報や走行記録、事務所の図面など、按分割合の根拠となる資料を残しておきましょう。
行政書士として事業を行う場合、所得税だけではなく、住民税や個人事業税、消費税などが関係することがあります。
なかでも、行政書士報酬の源泉徴収とインボイス制度は取り扱いを間違えやすい部分です。
弁護士や税理士など一部の専門家へ支払われる報酬は、所得税の源泉徴収対象となります。一方、一般的な行政書士業務に対する報酬は、原則として所得税法上の源泉徴収対象となる報酬には該当しません。
そのため、行政書士報酬として11万円を請求した場合に、弁護士や税理士への報酬と同じように一定額を源泉徴収するのが通常の処理とは限りません。
しかし、行政書士が行った業務であっても、その具体的な業務内容が源泉徴収対象となる別の資格者の業務に該当する場合などは、取り扱いが異なることがあります。資格名だけで判断せず、実際に行った業務の内容を確認することが重要です。
行政書士事務所も、一定の要件に該当すると消費税の課税事業者になります。個人事業者は、原則として基準期間である前々年の課税売上高が1,000万円を超える場合に消費税の納税義務が生じます。
ただし、前々年の課税売上高が1,000万円以下であっても、前年1月から6月までの特定期間の課税売上高等が1,000万円を超える場合や、課税事業者選択届出書を提出している場合などは課税事業者となることがあります。
また、インボイス発行事業者の登録を受けている期間は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても原則として消費税の申告が必要です。免税事業者が年の途中から登録を受けた場合は、原則として登録日からその年の12月31日までの取引が消費税の申告対象となります。
出典元 国税庁「No.6501 納税義務の免除」 国税庁「確定申告(インボイス)」
インボイス登録に伴って新たに消費税の課税事業者となった事業者は、一定の要件を満たす場合、売上税額の20%相当を納付税額とする「2割特例」を利用できます。
2割特例は、2026年9月30日までの日が属する課税期間をもって終了します。個人事業者の場合は、原則として2026年分まで対象です。その後は、自分が利用できる制度を確認しなければなりません。
2026年度税制改正では、一定の個人事業者について、2027年分・2028年分の消費税を売上税額の3割とする「3割特例」も設けられました。主な計算方法を比較すると、次のようになります。
行政書士業は、簡易課税制度では原則として第五種事業に該当するため、みなし仕入率は50%です。したがって、3割特例を利用できる行政書士の場合、単純な納付割合だけを見ると3割特例の方が有利になる可能性があります。
一方、大きな設備投資をした場合などは一般課税の方が有利になることもあります。消費税の計算方法は売上や経費の内容によって結果が変わるため、事前にシミュレーションしておくことが重要です。
【出典元】 国税庁|令和8年度税制改正特集 国税庁|簡易課税制度の事業区分
所得税や消費税の制度は改正されることがあります。前年と同じ方法で申告書を作成すると、控除額や適用できる制度を誤る可能性があるため、申告する年の制度を確認しましょう。
2025年度税制改正により、2025年分の所得税から基礎控除が見直されました。2025年分については、たとえば合計所得金額132万円以下の場合は95万円、655万円超2,350万円以下の場合は58万円です。
さらに、2026年度税制改正によって2026年分以後の基礎控除が再度引き上げられています。2026年分・2027年分については、合計所得金額489万円以下の場合は104万円、489万円超655万円以下の場合は67万円、655万円超2,350万円以下の場合は62万円となります。
行政書士の事業所得だけでなく、給与所得や不動産所得などがある場合は、それらを含めた合計所得金額を基に基礎控除額を確認しましょう。
【出典元】 国税庁|令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について 国税庁|令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について
インボイス制度と青色申告制度は別の制度です。インボイス登録をしたからといって青色申告をしなければならないわけではなく、青色申告をしているからといって自動的にインボイス発行事業者になるわけでもありません。
インボイス制度については、2割特例の終了や3割特例の創設など、2026年度税制改正による経過措置の変更があります。
2026年分までの制度では、65万円の青色申告特別控除を受けるためには、複式簿記による記帳、貸借対照表・損益計算書等の添付、期限内申告などの要件を満たしたうえで、e-Taxによる期限内申告または一定の電子帳簿保存を行う必要があります。
なお、2027年分以後は2026年度税制改正によって青色申告特別控除の仕組みが変更され、一定の要件を満たす場合には最高75万円の控除が設けられます。
出典元 国税庁|No.2072 青色申告特別控除 財務省|令和8年度税制改正の大綱(1/9)
確定申告の直前になって1年分の領収書や入金履歴を整理すると、売上や経費の計上漏れが発生しやすくなります。
毎月記帳を行い、定期的に請求書と入金履歴を照合しておくことが大切です。
行政書士の確定申告は、おおむね次の流れで進めます。
銀行口座やクレジットカードを事業専用に分けておくと、年間の取引を整理しやすくなります。
特に顧客から振り込まれた金額に行政書士報酬と立替費用が混在している場合は、請求書の内訳と照合できる状態にしておきましょう。
個人の所得税の確定申告期間は、原則として翌年2月16日から3月15日までです。期限の日が土日祝日に当たる場合は、原則として翌開庁日が期限になります。
申告書は、e-Taxのほか、税務署への持参や郵送などによって提出できます。また、所得税だけでなく消費税の課税事業者である場合は、消費税についても別途申告が必要です。
申告書を提出しただけで手続きが終わるわけではありません。納税額が発生する場合は、申告期限や納付期限を確認し、期限までに納付しましょう。
【出典元】 国税庁|No.1000 所得税のしくみ
確定申告後に売上の計上漏れなどが見つかり、本来納める税額より少なく申告していた場合は、原則として修正申告を行います。
反対に、経費や所得控除の計上漏れなどによって税金を多く納めていた場合は、更正の請求などによって訂正できることがあります。「間違いに気づいたが税務署から連絡が来るまで何もしない」という対応は避けた方がよいでしょう。
申告誤りを発見した場合は、帳簿や資料を確認し、必要に応じて早めに税理士へ相談することが大切です。
行政書士も、個人事業主である以上、税務調査の対象となる可能性があります。
税務調査では、申告書に記載された金額だけではなく、その数字を作成した根拠となる帳簿、請求書、領収書、銀行口座などが確認されることがあります。
行政書士事務所では、売上の計上漏れがないことを説明できるようにしておくことが重要です。たとえば、次の資料を相互に確認できる状態にしておきましょう。
特に年末近くに完了した業務については、翌年に入金された報酬が前年分の売上として計上すべきものではないか確認する必要があります。請求書番号を連番にするなど、売上の抜けを確認しやすい管理方法を採用するのも有効です。
税務調査では、売上だけでなく経費の内容について確認されることもあります。
行政書士業務では、顧客から受け取った実費相当額を立替金として処理するケースがあるため、「誰のために何を立て替え、いくら精算したのか」がわかる資料を保存しておくことが大切です。
また、自宅兼事務所の家賃や自家用車の費用を経費にしている場合は、家事按分の割合について説明できるようにしておきましょう。単に「半分くらい仕事で使っているから50%」と決めるのではなく、床面積、使用時間、走行距離など客観的な基準で計算することが重要です。
確定申告が終わったからといって、帳簿や領収書をすぐに処分してはいけません。帳簿、請求書、領収書、契約書などは、法律で定められた期間保存する必要があります。
また、メールで受け取った請求書やWebサイトからダウンロードした領収書など、電子取引によって受領した取引情報については、電子帳簿保存法に沿って電子データのまま保存することが必要です。
紙の領収書、PDFの請求書、クレジットカード明細、銀行口座のデータなどが複数の場所に分散していると、税務調査時の確認にも時間がかかります。日ごろから保存場所やファイル名のルールを決め、取引内容を確認できる状態にしておきましょう。
出典元 国税庁|電子帳簿等保存制度特設サイト
行政書士の確定申告では、報酬や未収金、立替金を適切に区分し、必要経費を正しく記帳することが大切です。
また、一般的な行政書士報酬は原則として源泉徴収の対象外ですが、業務内容によって取り扱いが異なる場合があります。インボイス発行事業者は、所得税に加えて消費税の申告にも注意が必要です。
税理士法人松本では、個人事業主の確定申告や記帳、消費税、税務調査に関するご相談に対応しています。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
登録者30万人以上のYouTubeチャンネル「税理士法人松本〜税金の裏のウラ〜」を運営。 代表を務める税理士法人松本では、これまでに累計5,000件を超える税務調査のご相談・対応実績があり、国税局査察部、税務署長歴任者・税務調査一筋の現場に強い国税出身のOB税理士が現在15名常駐。国税当局側の視点を踏まえて、お客様の立場を尊重し、税務調査でお悩みのお客様に適切かつ迅速に対応。また、調査前・調査中に関わらず、あらゆる状況から最善のサポートが可能。なお、調査結果が追徴税額なしとなる実績も多数取得。税務調査における専門性・経験則・折衝力から最善の結果を導き、お客様の笑顔とありがとうを励みに成長し続けている。
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